日本の8月CPIは1.9% 企業物価7.6%と大きく違う理由

企業間で取引される財の価格と家計が購入する財・サービスの価格の違いを表したイメージ 経済

総務省が9月18日に公表した2026年8月の全国消費者物価指数(CPI)は、総合指数が前年同月比1.9%上昇しました。

生鮮食品を除く総合は1.7%、生鮮食品とエネルギーを除く総合は1.9%です。

一方、日本銀行が先に公表した8月の国内企業物価指数は前年同月比7.6%上昇。同じ8月の「物価」でも数字には大きな差があります。

ただし、7.6%と1.9%を単純に引いて「5.7ポイントが企業の未転嫁分」と考えることはできません。そもそも2つの指数は、測っている価格が異なるためです。

8月CPIは総合1.9%

8月の主なCPIは次の通りです。

指標前年同月比
総合+1.9%
生鮮食品を除く総合+1.7%
生鮮食品・エネルギーを除く総合+1.9%

CPIは、全国の世帯が購入する財やサービスの価格変動を測る指標です。

生鮮食品は天候による値動きが大きく、エネルギーも原油価格など海外要因の影響を受けやすいため、これらを除いた指数も物価の基調を見る材料として使われます。

なお、全国CPIは今回の8月分から2025年基準へ切り替わっています。

企業物価7.6%とは何が違う?

一方の国内企業物価指数は、企業間で取引される財の価格を測ります。

8月は前年同月比7.6%上昇しましたが、前月比では0.2%低下しています。

つまり、「8月だけで企業の仕入れ価格などが7.6%上がった」という意味ではありません。1年前と比べれば高いものの、7月から8月にかけてはわずかに低下しました。

みらいアンテナでは、8月の企業物価7.6%と前月比0.2%低下についても詳しく整理しています。

5.7ポイントを「未転嫁」とは言えない

企業物価7.6%と消費者物価1.9%を単純比較できない理由を示した図

企業物価7.6%とCPI1.9%の差は、単純計算では5.7ポイントです。

しかし、これは価格転嫁率を示す数字ではありません。

企業物価指数は企業間で取引される「財」が中心です。一方、CPIには家計が購入する財だけでなく、家賃や外食などのサービスも含まれます。

対象品目やウエイトが異なるうえ、企業間の価格変化が小売価格へ反映されるまでには時間差もあります。企業がコスト上昇の一部を利益で吸収する場合もあります。

そのため、企業物価が7.6%だからといって、CPIが今後7.6%へ近づくとは限りません。

日銀の2%目標とはどう見る?

日本銀行は「物価安定の目標」を、消費者物価の前年比上昇率2%としています。

8月の総合CPI1.9%は数字だけなら2%に近い水準ですが、生鮮食品を除く指数は1.7%です。

さらに、日銀が目指しているのは、ある1カ月だけ2%になることではなく、2%程度の物価上昇が持続的・安定的に実現することです。

日銀はCPIが公表された9月18日、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す方針へ変更しました。

ただし、この決定を「8月CPIが1.9%だったから利上げした」と単純に結び付けることはできません。金融政策では、現在の物価だけでなく、経済・物価の先行きや金融情勢などを総合的に判断します。

次は「家計への波及」を見る

8月の数字から分かるのは、家計が直面する物価上昇率は2%前後である一方、企業間の財価格は1年前よりかなり高い水準にあることです。

ただし、企業物価は前月比では0.2%低下しています。

今後を見るうえでは、企業側の高いコストが家計の価格へどの程度波及するのかに加え、企業物価そのものが前月比で再び上向くのかも重要です。

「CPIが1.9%だからインフレは終わった」「企業物価が7.6%だから消費者物価も7.6%へ向かう」のどちらも早計です。

同じ「物価」でも、何の価格をどの時点で測っているのかを分けて見る必要があります。

参照した一次情報

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