プロテインが、いつの間にかかなり高くなっています。
ITmedia ビジネスオンラインによると、市販のプロテインは商品によって2年前の約1.5〜2倍まで価格が上昇。
大手の明治も9月から「ザバス ホエイプロテイン100」などの内容量を減らす予定です。
たとえば980gの商品は800gへ、2200gの商品は1800gへ変更。価格を据え置いた場合でも、実質的には約18%の値上げになります。
「筋トレする人が増えたから?」と思うところですが、背景を追っていくと事情はもう少し複雑です。
世界的な健康志向に加え、原料となるホエイの供給事情、さらには米国で広がる肥満症治療薬の利用まで関係しているとみられています。
ザバスは9月から最大22%の内容量減
明治が発表した内容量変更を見ると、値上がりの大きさが分かります。
9月以降、「ザバス ホエイプロテイン100」は980gから800g、2200gから1800gへ変更。
「ザバス BIOPRO ホエイプロテイン100 ヨーグルト風味」は900gから700gになります。
商品によって約11〜22%の内容量減です。
明治は6月にもザバス関連商品を値上げしており、プロテインを継続して飲んでいる人ほど負担増を感じやすい状況になっています。
別メーカーでも同様です。
「GronG」を展開するUltimate Lifeは2026年に複数回の価格改定を実施。
「ホエイプロテイン100 スタンダード 1kg」は3780円から5980円まで上昇しました。
一時的な値上げではなく、業界全体で価格上昇が続いているのが今回の特徴です。
そもそも、なぜプロテインの原料が足りない?
多くの粉末プロテインで使われているのが「ホエイ」です。
ホエイは牛乳からチーズを作る際に生じる乳清で、そこからタンパク質を濃縮したWPCやWPIがプロテインの原料になります。
日本はこの原料の多くを海外からの輸入に頼っています。
ここで難しいのが、プロテイン需要だけ増えたからといって、すぐにホエイを増産できるわけではないことです。
ホエイは基本的にチーズ生産に伴って生まれるため、「プロテインが売れているからホエイだけ大量に作ろう」とはいきません。
その一方で、世界ではフィットネスや健康志向が広がり、タンパク質需要が拡大。
米国や欧州だけでなく、中国やインド、東南アジアなどでもプロテイン市場が成長しています。
欲しい人は増えているのに、原料供給は簡単には増やせない。
この需給のズレが価格を押し上げています。
筋トレだけじゃない。「高タンパク」が普通の商品に
もう一つ大きいのが、プロテインを買う人そのものが変わったことです。
かつては、
「プロテイン=筋トレを本格的にしている人が飲むもの」
というイメージが強くありました。
現在はコンビニでも高タンパク飲料やプロテインバーを普通に見かけます。
オイコスのような高タンパクヨーグルトも定着しました。
24時間ジムや初心者向けジムが増え、トレーニングを生活に取り入れる人の裾野も広がっています。
つまり現在は、ボディビルダーだけがホエイを取り合っているわけではありません。
飲料、バー、ヨーグルト、食品などさまざまな商品で「高タンパク」が売りになるようになり、原料の需要先そのものが増えています。
意外な要因、「やせ薬」ブームとの関係
さらに米国では、GLP-1系などの肥満症治療薬の普及が新しい高タンパク需要を生んでいると報じられています。
こうした薬を使用して体重が減少する際には、脂肪だけでなく筋肉量も落ちる可能性があります。
そのため米国では、治療薬の利用者向けに高タンパク食品を販売する動きが広がっています。
プロテインだけでなく、高タンパクをうたうアイスやパスタなどの商品も登場しています。
結果として、従来とは別の層からタンパク質需要が増えているわけです。
ただし、「やせ薬だけがプロテイン高騰の原因」と考えるのは適切ではありません。
メーカーが直接挙げているのは世界的な需要拡大や原材料価格、物流費などの上昇です。
肥満症治療薬の普及は、その需要拡大を後押ししている要因の一つとして見るのがよさそうです。
なお、日本で「マンジャロ」の商品名で知られる薬は2型糖尿病の治療薬として承認された医薬品です。美容・ダイエット目的での安易な使用については、厚生労働省も注意を呼びかけています。
ネットでは「本当に高くなった」の実感も
今回のニュースについて、はてなブックマークで大きな盛り上がりはまだ確認できません。
一方、過去のプロテイン高騰の記事では「本当に高くなった」「鶏むね肉なども上がっていてつらい」といったコメントが見られました。
Yahoo!リアルタイム検索でも、今回のニュースに対して「今プロテインってそんなに流行っているのか」と需要拡大に驚く投稿や、普段利用している製品の価格を気にする反応が出ています。
ネット上の反応は現時点では限定的ですが、日常的にプロテインを飲む人にはかなり実感しやすい値上げと言えそうです。
みらいアンテナの見方:「健康食品ブーム」から普通の食品需要へ
今回のニュースで面白いのは、単なる物価高だけでは説明できないところです。
プロテイン市場は、
「一部の筋トレ好きが買うサプリ」
から、
「普通の人も日常的にタンパク質を補う食品」
へ変わりつつあります。
需要が一時的なブームなら、価格上昇によって購入者が減り、いずれ需給が落ち着く可能性があります。
ところが2026年2月に日本ネット経済新聞がプロテイン販売企業へ調査したところ、値上げ後も販売量は増加傾向だったと報じています。
高くなっても買う人が減っていない。
ここが価格が下がりにくい理由の一つになりそうです。
しかもホエイは簡単に増産できず、日本は輸入依存。
円安や物流費の影響も受けます。
「そのうち昔の値段に戻るだろう」と期待するには、少し厳しい環境です。
今後見るポイント
まず注目したいのは、ホエイ原料の国際価格が落ち着くかです。
Ultimate Lifeは2026年3月の価格改定時点でも、原材料価格が今後さらに上昇する可能性に言及していました。
世界の高タンパク需要が伸び続ければ、プロテイン価格も高止まりする可能性があります。
一方、価格が上がりすぎれば、消費者側もホエイ以外へ目を向けるでしょう。
ソイプロテインや食品からタンパク質を取る方法など、「ホエイ一択」ではなくなる可能性もあります。
プロテインの値上がりは単なる筋トレ用品のニュースではありません。
世界的に「タンパク質を手軽に取りたい人」が増えた結果、原料の奪い合いが起きている。
2年前の1.5〜2倍という価格は、プロテインがそれだけ一般的な商品になったことの裏返しでもありそうです。

