399ドルの「あひる型AIロボ」が大人気 Microduck、24時間で注文260万ドル超

あひる型の小型AIロボットを自宅で学習させる様子をイメージした画像 ガジェット

「AIロボット」と聞くと、人間サイズのヒューマノイドや工場で働く高価なロボットを想像するかもしれません。

そんな中、Hugging Face傘下のPollen Roboticsが発表したのが、あひるのような小型二足歩行ロボット「Microduck」です。

価格は399ドル。高さ約25cmの小さなロボットですが、歩く、座る、転んだ状態から起き上がる、小さな物を拾う、さらにはローラースケートまでこなします。

しかも単なるロボット玩具ではありません。

シミュレーターやSDKなども公開され、自分で新しい動きを学習させられる「ロボット開発プラットフォーム」としての側面を持っています。

この組み合わせが開発者を中心に注目を集め、発売から24時間で注文総額が260万ドルを超えたと報告されています。

Microduckってどんなロボット?

Microduckは、フランスのロボット企業Pollen Roboticsが8月27日に予約受付を開始した小型二足歩行ロボットです。

公式情報によると、高さは約25cm、重量は800g未満。

内部にはRockchip RK3566プロセッサ、カメラ、小型LiDAR、2基のIMUなどを搭載しています。Wi-FiやBluetoothにも対応し、バッテリー駆動時間は約1時間です。

出荷時点では、歩行や立ち座り、キック、地面にある物を拾う、ローラースケート、転倒状態からの復帰など、7種類の学習済み動作が用意されています。

ゲームコントローラーを使って操作することもできます。

見た目だけなら「ちょっと高級なロボット玩具」にも見えますが、中身はかなり開発者寄りです。

面白いのは「自分で動きを作れる」こと

Microduckの大きな特徴が、ユーザー自身で新しい動作を作れることです。

SDKだけでなく、MuJoCoを使った物理シミュレーターや強化学習用の環境、学習した動きを実機へ移すための仕組みも用意されています。

ざっくり言えば、

「PC上の仮想Microduckに新しい動きを練習させる」

「学習結果を実物のMicroduckへ移す」

ということができます。

ロボットの世界では「sim-to-real」と呼ばれるアプローチです。

現実のロボットで何千回も転倒させながら学習させるのは大変ですが、シミュレーターなら高速に試行錯誤できます。

そこで学習した結果を実機へ持っていくわけです。

Microduckは完成した動作を楽しむだけでなく、ロボットAIそのものを試す教材として遊べるのがポイントです。

発売24時間で注文260万ドル超

そして、予想以上だったのが発売直後の反応です。

Hugging Face共同創業者のThomas Wolf氏は、Microduckの発売から約6時間で注文総額が100万ドルを超え、その後24時間で260万ドルを突破したと明らかにしています。

399ドルだけで単純計算すると約6,500台分になります。

ただし、これは「6,500台売れた」という意味ではありません。

Microduckではバッテリーや開発者向けアクセサリーなども販売されているため、注文総額を本体価格で割った数字と実際の販売台数は一致しません。

それでも、399ドルの開発者向けロボットとしてはかなり大きなスタートです。

需要の強さから配送にも影響が出ています。

当初は2026年のクリスマス前に出荷する予定でしたが、注文が集中したことで、新規注文については4〜6カ月程度の待ち時間が発生していると報じられています。

Hacker Newsでも700ポイント超、何が刺さった?

海外の開発者コミュニティHacker NewsでもMicroduckは大きな反応を集めています。

記事化時点では、関連投稿が736ポイント・236コメントに達しています。

興味深いのは、「かわいい」「欲しい」だけで盛り上がっているわけではないことです。

コメントでは、実際に公式シミュレーターを試したユーザーも登場。

特に評価されていたのが、ロボット本体だけでなく、シミュレーターから学習環境まで最初から用意されている点です。

家庭でロボット開発を試そうとすると、環境構築だけでもかなり手間がかかります。

Hacker Newsでは、別のロボットシミュレーション環境で同じことを試してうまくいかなかったというユーザーから、「シミュレーターが最初から動くこと自体が家庭のホビーユーザーには大きい」という趣旨の反応もありました。

一方、「小型ロボットはカーペットのような床面が苦手なのでは」と実際の家庭環境での走破性を気にするコメントもあります。

かわいさよりも、「実際に自宅でロボティクスを試せるプラットフォームなのか」が議論されているのが面白いところです。

日本でもITmedia NEWSの記事が、記事化時点ではてなブックマーク33usersを集めています。

海外ほどの盛り上がりではないものの、日本の技術系ユーザーにも徐々に知られ始めています。

みらいアンテナの見方:重要なのは「あひる」より399ドル

Microduckは、あひる型でローラースケートまで履くという見た目だけでもニュースになります。

ただ、もう少し重要なのは399ドルという価格ではないでしょうか。

AIロボットの研究は急速に進んでいますが、これまで個人にとっては「動画で見る技術」になりがちでした。

高性能なヒューマノイドロボットを自宅に買って、AIの学習を試してみるというのは現実的ではありません。

Microduckはそのハードルを大きく下げています。

399ドルなら日本円ではおおむね6万円前後。送料や税金などを考えれば実際にはもう少し高くなりますが、PCやスマートフォンと同じくらいの価格帯に入り始めます。

そして購入後に、

「歩かせてみる」

「シミュレーターを触ってみる」

「新しい動きを学習させてみる」

「実機で動かしてみる」

という段階を踏めます。

生成AIでは、かつて巨大なデータセンターでしか扱えなかった技術が、徐々に個人のPCでも試せるようになりました。

ロボティクスでも同じように、「研究所で見る技術」から「自宅で触れる技術」への変化が始まっていると考えると、Microduckの面白さが見えてきます。

ただし「何でもできるAIロボ」ではない

ここは少し注意が必要です。

Microduckを「399ドルで買える家庭用AIロボット」と考えると、期待しすぎてしまいます。

掃除や料理をしてくれるわけでもなければ、ChatGPTのように何でも指示すれば自律的に行動してくれるロボットでもありません。

本体も高さ25cm程度です。

現時点では、

「AIで動きを学習できる、小型ロボティクス開発キット」

と考えるほうが実態に近いでしょう。

その代わり、自分でプログラムを書いたり、強化学習を試したりしたい人にとっては、単なる完成品のロボットより面白い可能性があります。

今後見るポイント

まず注目したいのは、実際に製品がユーザーの手元へ届いてからです。

公式デモでは滑らかに歩いたりローラースケートをしたりしていますが、一般家庭の床やカーペットでも同じように動けるのかは実機レビューを待つ必要があります。

さらに面白くなりそうなのが、ユーザーが作った動作の共有です。

オープンな開発環境を生かして、

「こんな動きを学習させた」
「こんなセンサーを組み合わせた」

といった作品がコミュニティから出てくれば、Microduckはハードウェアそのもの以上に「ロボットAIを遊ぶための共通プラットフォーム」へ育つ可能性があります。

日本から正式に購入できるようになるのかも注目です。

初期の出荷地域に日本は含まれていないため、日本展開や価格については今後の発表を待つ必要があります。

まとめ

399ドルのMicroduckは、かわいいあひる型ロボットというだけでも十分キャッチーな製品です。

しかし、24時間で260万ドル超の注文を集めた背景には、それだけでは説明できない面白さがあります。

シミュレーターや強化学習環境まで用意され、個人が自宅で「ロボットに新しい動きを覚えさせる」体験を現実的な価格で試せるようになりました。

AIが画面の中だけでなく、実際の物体を動かす「Physical AI」。

その入口が399ドルのあひる型ロボットというのは、なかなか面白い未来の始まりかもしれません。

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