景気拡大、続いていれば74カ月 戦後最長「いざなみ」超えの可能性

長期間続く日本の景気拡大をタイムラインと緩やかな経済グラフで表したイメージ 経済

内閣府が2026年9月7日に発表した7月の景気動向指数で、景気の現状を示す「一致指数」は120.6となり、前月から1.7ポイント上昇しました。上昇は2カ月連続です。

基調判断も「改善を示している」に据え置かれました。内閣府の基準では「改善」は、景気拡張の可能性が高いことを示します。

ここで気になるのが、「現在の景気拡大が戦後最長になったのではないか」という点です。

直近で正式に設定されている景気の谷は2020年5月。その翌月の2020年6月から2026年7月まで景気拡大が続いていたとすれば74カ月となり、これまで最長だった「いざなみ景気」の73カ月を1カ月上回ります。

ただし、現時点で「戦後最長の景気拡大が正式に確定した」という意味ではありません。

7月の一致指数は120.6、何が押し上げた?

7月の一致指数は前月比1.7ポイント上昇しました。

内閣府が公表した個別系列を見ると、特にプラス寄与が大きかったのは次の項目です。

項目一致指数への寄与度
投資財出荷指数(除輸送機械)+0.68
商業販売額(小売業)+0.47
鉱工業用生産財出荷指数+0.25
輸出数量指数+0.22

この4項目だけを単純合計すると+1.62ポイントです。

一方、耐久消費財出荷指数は-0.05、商業販売額(卸売業)は-0.05、有効求人倍率(除学卒)は-0.01の寄与でした。

つまり、すべての指標が一斉に良くなったわけではなく、設備・生産財、小売、輸出などの改善が全体を強く押し上げています。

一致指数120.6は、内閣府の長期時系列で確認すると2018年10月の122.0以来、7年9カ月ぶりの高水準です。2018年11月は120.1、その後も2026年6月までは120.6を下回っていました。

74カ月なら「いざなみ景気」を1カ月上回る

内閣府が確定している過去の景気基準日付と比べると、今回の長さが分かりやすくなります。

景気拡大局面拡張期間状態
第16循環71カ月確定
第14循環(いざなみ景気)73カ月確定
今回74カ月※正式認定前

※2020年5月を谷とし、その翌月の2020年6月から2026年7月まで景気拡大が続いていた場合。

第16循環71カ月、いざなみ景気73カ月に対し、今回の景気拡大が続いていれば74カ月となることを比較した横棒グラフ

これまで戦後最長だった第14循環は、2002年1月の谷から2008年2月の山までの73カ月です。

その後の第16循環は、2012年11月の谷から2018年10月の山までで71カ月。2018年10月が山、2020年5月が谷という景気基準日付は、後から正式に設定されました。

今回も2020年5月が直近で確定している谷ですが、その後の景気の山はまだ設定されていません。

そのため「74カ月」は、現時点のデータを前提にした期間であり、正式に確定した記録ではありません。

「改善」と「戦後最長の正式認定」は別

毎月発表される景気動向指数の基調判断と、正式な景気の「山」「谷」は別のものです。

内閣府は7月について、一致指数の基調判断を「改善」としています。

「改善」は、機械的な基準から景気拡張の可能性が高いことを示すものです。一方、正式な景気循環の山・谷は、一致指数の採用系列から作成する「ヒストリカルDI」に基づき、景気動向指数研究会での議論を踏まえて設定されます。

つまり、現在の基調判断が「改善」だからといって、2020年6月から2026年7月まで74カ月間の拡大がすでに正式認定されたわけではありません。

実際、第16循環についても、景気の山は2018年10月、谷は2020年5月と事後的に確定されています。

今回も将来の検証で2026年7月より前に景気の山が設定されれば、74カ月という期間は成立しないことになります。

そのため今回のニュースは、

「戦後最長が確定した」ではなく、「景気拡大が続いていたと認定されれば戦後最長になる水準まで来た」

と理解するのが正確です。

「戦後最長=ものすごい好景気」ではない

もう一つ混同しやすいのが、景気拡大の「長さ」と「強さ」です。

景気動向指数の一致指数は、生産、出荷、販売、雇用など複数の経済指標を合成して作られています。

2020年を100とした一致指数が120.6だからといって、「日本経済の規模が2020年より20.6%大きくなった」という意味ではありません。

同様に74カ月という数字も、「74カ月ずっと力強い好景気だった」という意味ではありません。

景気の谷から次の山までの期間が長ければ、途中に弱い時期や横ばいに近い時期があっても、結果として長い拡張局面になることがあります。

そのため、

  • 戦後最長かどうか → 景気拡大の「期間」
  • 景気がどれだけ強いか → GDP、消費、生産、設備投資などの「伸び」
  • 家計が好景気を実感できるか → 賃金、物価、実質所得など

は分けて見る必要があります。

「戦後最長」という言葉だけから、過去最大級の好景気だったと受け取るのは適切ではありません。

次に見るのは指数120.6より「景気の山」

7月の一致指数は1.7ポイント上昇し、基調判断も「改善」を維持しました。現在も景気拡張局面にある可能性を示す材料が、さらに一つ増えた形です。

ただ、戦後最長という記録を最終的に決めるのは、毎月の一致指数が何ポイントになったかではありません。

今後、景気の「山」がいつに設定されるのかが決定的です。

2026年7月以降も拡大が続いていたと判定されれば、期間はさらに延びます。逆に、過去にさかのぼって景気の山が設定されれば、現在想定されている74カ月より短くなる可能性があります。

今回の「74カ月」という数字は十分に目を引きますが、正式な景気基準日付がどう判断されるかまで見て初めて、戦後最長かどうかが確定します。

参照した一次情報

タイトルとURLをコピーしました