「NISA満額のため彼女と別れた」極端な投資生活が話題に
将来のための資産形成制度であるNISA。
そのNISAを優先するあまり、現在の生活を極端に切り詰める「NISA貧乏」が話題になっています。
ABEMA TIMESが紹介したのは、名古屋で開催された「あつまれNISA貧乏バー」というイベントです。
参加者からは、
- 収入約20万円のうち11万円を投資
- 収入の7割を投資
- 資産の95%を投資に回し、預貯金は5%
- 外食を避け、食費を徹底的に削減
といった投資生活が語られました。
中でも強烈なのが、イベント主催者の30代男性のエピソードです。
年間のNISA枠を満額使うことを優先し、恋愛も節約対象に。前年まで付き合っていた彼女についても、「NISA満額埋められないな」と考えて別れたといいます。
「まず5年間でNISAを埋め、その後に恋愛を考える」というほど、資産形成を優先しているそうです。
なぜ「5年で満額」にこだわるのか
現在のNISAでは、
つみたて投資枠:年間120万円
成長投資枠:年間240万円
を合わせ、年間最大360万円まで投資できます。
非課税で保有できる総額は1800万円です。
そのため、
360万円 × 5年間=1800万円
となり、制度上は最短5年間で非課税保有限度額を使い切れます。
早く投資すれば、それだけ長期間運用できるため、複利効果を期待しやすくなるという考え方には一定の合理性があります。
例えば同じ1800万円を投資する場合でも、投資期間が長いほど運用益が積み上がる可能性は高くなります。
ただし、ここで勘違いしたくないのが、
「年間360万円まで投資できる」=「年間360万円を投資すべき」
ではないという点です。
360万円はあくまで制度上の上限です。
実は「毎年ほぼ満額」は少数派
SNSを見ると、「今年もNISA満額」「最短5年で1800万円」といった投稿が目につきます。
そのため、「みんな数百万円投資しているのでは」と感じてしまうかもしれません。
実態はかなり違います。
ABEMA TIMESが金融庁の調査をもとに紹介した数字では、2025年の1年間に**300万~360万円をNISAで買い付けた人は、NISA口座保有者全体の5.7%**でした。
30代でも6.1%、40代でも7.5%です。
つまり、NISAを使っている人の中でも、年間上限に近い金額を投資しているのは少数派です。
一方、NISAそのものの利用は急速に拡大しています。
金融庁によると、2025年12月末時点でNISA口座は2821万口座、制度開始以来の累計買付額は71兆円に達しました。
「NISAを使う」ことはかなり一般的になりましたが、「毎年360万円を投資する」ことはまったく別の話なのです。
ネットでは「彼女を損切り」が話題に
今回のニュースはネットでもかなり反応を集めています。
はてなブックマークでは調査時点で127 users。
Xでは特に、「NISA満額のために彼女と別れた」というエピソードへの反応が目立ちました。
投資用語になぞらえて「彼女を損切り」とツッコむ投稿が出る一方、
「今の生活を苦しくしてまで老後に備える必要があるのか」
「毎月数万円の積立でも十分では」
といった意見も見られます。
一方で、
「本人が節約生活を楽しんでいるなら問題ない」
「趣味にお金を使う代わりに投資しているだけ」
という見方もあります。
ここは単純に「節約しすぎは悪い」と片付けられない部分でしょう。
みらいアンテナの見方:「枠を埋める」が目的になると順序が逆になる
今回のニュースで一番面白いのは、NISAがいつの間にか、
資産形成の手段から「1800万円のゲージを埋めるゲーム」のようになっている
点ではないでしょうか。
年間360万円という数字を見ると、「使わなければ損」という感覚になるのは理解できます。
SNSでは資産額や年間投資額も可視化されやすいため、
「自分より年収が低そうなのに月10万円積み立てている」
「もう1000万円以上NISAに入れている」
と他人と比較することもできます。
しかし、本来先に決めるべきなのはNISAの入金額ではなく、
「何のために、いつまでに、いくら必要なのか」
です。
金融庁も資産形成について、家計やライフプランを考え、貯蓄と投資を使い分けることを基本としています。
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の教材でも、お金を
「日々の生活に必要なお金」
「数年以内に使う予定のお金」
「当面使う予定のないお金」
に分け、投資は3つ目のお金で行うことが基本とされています。
今回の記事で専門家が「会社員なら半年分程度の生活防衛資金を」と話しているのも、この考え方に近いでしょう。
ただし、半年という数字はNISAの公式ルールではありません。
家族構成、雇用の安定性、住宅購入予定などによって必要な現金額は変わります。
重要なのは、
NISAを満額にした結果、急な出費に対応できない状態にしないこと
です。
それでも「早く投資する」考え方自体は間違いではない
一方で、「NISAを早く埋める人は間違っている」という話でもありません。
十分な預貯金があり、数年以内の大きな支出も確保できているなら、余裕資金を早めに市場へ投入することには合理性があります。
例えば、
現金2000万円を持っている人が毎年360万円ずつNISAへ移す
のと、
月収20万円から毎月11万円を捻出し、預貯金がほとんど残らない状態で投資する
のでは、同じ「NISA満額」でも家計へのリスクはまったく違います。
見るべきなのは投資額そのものではなく、
投資後にも十分な余力が残っているか
でしょう。
今後注目したいのは「NISA普及」の次
2024年の新制度開始後、NISAは急速に普及しました。
2025年末には2821万口座、累計買付額71兆円まで拡大しています。
次に注目したいのは、「何人がNISAを始めたか」だけではありません。
投資を始めた人が、
- 無理のない金額で継続できているか
- 相場下落時にも投資を続けられるか
- 急な支出でNISA資産を売却していないか
- 現在の生活と将来の資産形成を両立できているか
といった部分です。
NISAは「1800万円を埋めた人が勝ち」という制度ではありません。
彼女と別れるほど投資を優先するかどうかは本人の価値観ですが、少なくとも非課税枠の満額達成そのものをゴールにしないことは、多くの人に当てはまりそうです。

