OpenAI、金融機関向けChatGPT発表 PitchBook Essentialsなど有料データを内蔵

金融データをAIで分析し財務モデルや資料を作成する金融機関向けAIのイメージ AI・テクノロジー

OpenAIは9月10日、金融機関向けの新プラン「ChatGPT for Financial Services」を発表しました。

ChatGPT Enterpriseを基盤に、GPT-6 Astraと金融データを組み合わせ、企業調査、財務モデル、リサーチノート、ピッチブックなどの作成を支援します。

特徴は、PitchBook EssentialsやDaloopaなどの専門データを、対象範囲では別契約やコネクター設定なしで使えることです。

ただし、各データ会社のサービスを丸ごと使えるわけではありません。データの範囲、遅延、利用できる地域には制限があります。

金融向けに追加された4つの要素

ChatGPT for Financial Servicesは、単に「金融に詳しいChatGPT」という位置付けではありません。

主な特徴は次の4点です。

要素 内容
専門データ PitchBook Essentials、Daloopa、Quartr、Crunchbaseなどを選択範囲で内蔵
出典追跡 数字や主張から元の表・文章までたどって確認できる
社内テンプレート Excel、Word、PowerPointの自社テンプレートやスタイルを管理者が設定可能
アクセス管理 ワークスペースやロールごとに金融データへのアクセスを管理

組み込みデータはOpenAI側でインデックス化・ホストされ、対象データについては別途プロバイダー契約やコネクター設定をしなくても利用できます。

これらの金融データは通常のChatGPT Enterpriseには含まれず、Financial Servicesという別プランが必要です。

PitchBookも「全部入り」ではない

注意したいのは、「有料金融データ内蔵」が各サービスの全データを意味するわけではないことです。

PitchBookは「PitchBook Essentials」で、非公開企業の基本情報や最近の資金調達情報などが対象です。

Daloopaでは財務諸表や一部の企業指標を利用できますが、データは24時間遅延し、1ユーザーあたり月3,000データポイントという上限があります。

米国株の市場データではFMPやNasdaqが利用でき、Nasdaqデータは15分遅延です。

LSEG NewsのReutersニュースにも地域制限があり、対象は米国拠点の金融プロフェッショナルとなっています。

既存の金融情報端末やデータサービスを、そのまま全面的に置き換えるものではありません。

分析からピッチブックまで一続きに

OpenAIが最初の重点領域としているのは、投資銀行業務とエクイティリサーチです。

Morgan StanleyとEvercoreをデザインパートナーとして開発し、企業価値分析、LBOモデリング、買収候補のスクリーニング、決算分析、ピッチブック作成などを用途として挙げています。

GPT-6 Astraは、金融資料に含まれる数字や表、注記を読み、分析結果を文書、スプレッドシート、スライドへまとめられます。

さらに企業側が自社のExcel、Word、PowerPointテンプレートやスタイルガイドを設定できます。

金融データを探すところから分析し、自社形式の成果物を作るところまで、一つの環境へまとめるのが今回の大きな狙いです。

専門金融データをGPT-6 Astraが分析し財務モデルやピッチブックを作る流れ

金融では権限管理と検証も重要

金融機関では、顧客情報や重要な未公開情報を扱うため、AIの性能だけでは導入できません。

Financial ServicesはChatGPT EnterpriseのSAML SSO、SCIM、ロールベースアクセス制御を引き継ぎます。企業の業務データはデフォルトでOpenAIのモデル学習に使われず、保存時・通信時の暗号化や保持期間の設定にも対応します。

一方、このプランはワークスペース全体へ適用されます。同じワークスペース内で通常のEnterpriseユーザーとFinancial Servicesユーザーを混在させることはできません。

またOpenAI自身も、金融データやAIの出力が不正確、不完全、遅延している可能性があるとしています。Financial Servicesは投資助言を提供するものではなく、重要な数字や判断は元データを確認する必要があります。

Redditでは「仕事への影響」に反応

Redditのr/OpenAIに投稿された公式発表は、9月12日7時台の確認時点で592票を集めています。

コメントでは、M&Aや市場調査など若手金融人材が担ってきた業務への影響を心配する声が目立ちました。

一方、「大手金融機関が顧客データを第三者のAIサービスへどこまで渡すのか」と、データ管理や外部依存を問題視する意見もあります。

あくまで一つのReddit投稿に集まった反応で、金融業界全体の意見を表すものではありません。ただ、性能だけでなく「仕事がどう変わるか」「機密データをどう管理するか」に関心が集まっていることは分かります。

日本で使えるかは個別確認が必要

ChatGPT for Financial Servicesは、対象となる金融機関向けに提供されています。

料金は一般公開されておらず、OpenAIの営業担当または既存のアカウント担当者へ、価格と利用条件を問い合わせる仕組みです。

利用可否は組織の規模や種類、データプロバイダー側の制約によって変わります。現時点では、日本の金融機関向けの一律の提供条件は公式に公表されていません。

そのため「日本では使えない」という意味ではなく、導入を検討する金融機関ごとに確認が必要です。

今回の発表で注目したいのは、「AIが銀行員を代替するか」という単純な話よりも、専門データ、AIによる分析、成果物作成、企業向けガバナンスを一つの製品としてまとめたことでしょう。

金融向けAIでは、モデルそのものの性能だけでなく、どのデータを、どの権限で、安全に業務へ組み込めるかが重要になってきています。

参照した一次情報

参照したネット反応

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