本物そっくりのAI生成レシート、経費精算はどう守る? マネフォは「領収書に頼らない」対策を提案

AI生成レシートとカード決済データを照合して経費を確認するイメージ AI・テクノロジー

生成AIで作った「本物そっくりのレシート」が、企業の経費精算に新たな課題を突き付けています。

きっかけは、OpenAIが9月8日に公開した画像生成機能「ChatGPT Images 2.5」で作られたコンビニ風レシートです。Xに投稿された画像は一見すると普通のレシート写真に見え、経費精算などへの悪用を心配する声が広がりました。

問題は「AI画像を人間が見抜けるか」だけではありません。マネーフォワードが示した対策を見ると、経費精算そのものを「領収書の見た目を確認する仕組み」から「実際の取引データを確認する仕組み」へ変える必要がありそうです。

ChatGPT Images 2.5でレシートも精巧に

OpenAIは9月8日、「ChatGPT Images 2.5」を発表しました。

従来モデルより細部の表現や編集精度を高め、画像生成の待ち時間もImages 2.0比で最大50%短縮。ChatGPTでは全プランで利用できます。

今回話題になったX投稿では、ChatGPT Images 2.5で生成したコンビニ風レシートが公開されました。

ITmedia NEWSも実際に生成を試し、実在店舗名の再現には失敗した一方、架空の店舗名であればロゴやレイアウト、商品名、価格などを本物に近い形で生成できたと報じています。

画像そのものの完成度が上がるほど、「字体がおかしい」「レイアウトに違和感がある」といった目視チェックだけでは対応しにくくなります。

マネーフォワード「企業が自力で見破るのは難しい」

ITmedia NEWSの取材に対し、マネーフォワードは、生成AI以前から領収書加工による架空の立替経費精算を課題として認識しており、AIの進化でリスクが増大したとの見方を示しています。

同社で財務・会計実務を統括する松岡俊CAOは、企業がAIで偽造された領収書画像だけを見せられた場合、自力で見破るのは難しいと説明しています。

そこで重要になるのが、「領収書そのものに頼らない」経費精算です。

マネーフォワード クラウド経費では、コーポレートカードなど外部サービスのデータと経費明細を連携できます。2026年4月には、スマートフォンでOCR読み取りした領収書とコーポレートカードの利用明細を自動で突合する機能も追加されました。

画像に1万円と書いてあるかではなく、「実際にそのカードで1万円が支払われた記録があるか」を確認するわけです。

海外では検知された不正レシートの70.8%がAI生成

AI生成レシートは、将来だけの問題でもありません。

経費監査サービスのAppZenによると、同社のプラットフォームで不正としてレビュー対象になったレシートのうち、AI生成が占める割合は2025年3月には0%でした。

ところが2026年4月には従来のテンプレート加工型を上回り、5月中旬には70.8%に達したとしています。

AI生成レシートの平均金額は約100ドルで、従来型の偽造レシートの約180ドル超より小さいというデータもあります。

ただし、これは「世界の経費不正の70.8%がAI」という意味ではありません。AppZenが不正として検知したレシート内の構成比です。

AppZen自身も、経費不正そのものが急増している証拠があるわけではないとしています。変わっているのは、不正の件数より「偽造の方法」と考える方が正確です。

また、Emburseが2026年5月に米英の就業者2000人を調査したところ、34%が業務経費用の偽レシートをAIで作った経験があると回答しました。

こちらも自己申告による米英調査のため、日本企業へそのまま当てはめることはできません。それでも、AIによる証憑偽造が一部の特殊な手口ではなくなりつつあることを示す数字です。

OpenAIもC2PAと電子透かしを導入

生成元を確認する技術も進んでいます。

OpenAIによると、ChatGPT Images 2.5では生成画像にC2PAメタデータを付与し、さらにGoogle DeepMindの「SynthID」による不可視の電子透かしも組み合わせています。

つまり、「AI画像かどうか」を技術的に確認する手段も用意されています。

ただし、OpenAI自身も生成元確認について「単一の解決策はない」と説明しています。

企業側の経費精算システムが毎回こうした情報を検査しているとは限りませんし、OpenAI以外の画像生成サービスも存在します。

そのため、AI生成判定だけを経費精算の防波堤にするのは現実的ではなさそうです。

企業が見直したい3つのチェック

AI生成レシート対策として決済データと申請履歴を照合し、例外だけ人が確認する経費精算フロー
マネーフォワード、AppZenの公開情報を基に、みらいアンテナ編集部作成

企業側で優先したいのは、レシート画像の真贋当てゲームから離れることです。

チェック確認するもの狙い
決済データ法人カード・カード明細実際に支払いがあったか
申請データ日付・金額の重複、申請履歴二重申請や不自然な傾向を検知
例外処理現金・個人カード利用の理由、原本データ連携できない支出を重点確認

マネーフォワードは、社員の支払いを可能な範囲でキャッシュレスへ統一し、決済データを経費精算システムへ直接取り込む方法を挙げています。

個人カードでも明細を連携できれば、実際に支払いがあったかを確認できます。

一方、システムとの連携が難しい支払いでは、領収書原本を保管し、抜き打ちで確認する方法も有効だとしています。

「全レシートを人間が厳しく見る」のではなく、決済データで確認できるものは自動化し、確認できない例外へ人間のチェックを集中させる方が現実的です。

Xでは約320万表示、会計関係者からも反応

話題のきっかけとなった公認会計士のX投稿は、9月11日夜に確認した第三者ミラーのスナップショットで、約320万表示、約1.1万いいね、約3000リポスト規模まで拡散していました。

返信では、経費精算の確認フローそのものを変える必要性を指摘する声がある一方、インボイス登録番号やAI生成画像の電子透かしを確認できるのではないかという意見も出ています。

一枚のサンプル画像に対する反応であり、一般的な世論を示すものではありません。

ただ、「人間の目で見れば分かる」という従来の前提に疑問が出ていることは、この反応の大きさからもうかがえます。

「本物か」ではなく「取引があったか」を確認する時代へ

AI生成レシートへの対策として、最も重要なのはAI画像を完璧に見抜くことではなさそうです。

どれだけ画像生成技術が進歩しても、実際のカード決済データまで同時に作り出せるわけではありません。

「このレシートは本物か」ではなく、「この取引は実際に存在したのか」。

経費精算の確認軸をそこへ移せば、特定の画像生成AIの性能に左右されにくい仕組みにできます。

生成AIの進化によって、企業の内部統制も「紙や画像を信用する仕組み」から「複数のデータを突き合わせる仕組み」へ変わる必要がありそうです。

参照した一次情報

  • OpenAI「Introducing ChatGPT Images 2.5」
  • OpenAI「ChatGPT Images 2.5 System Card」
  • マネーフォワード クラウド経費「アプリでの明細登録時にコーポレートカードの利用明細と紐づけられるようになりました」
  • マネーフォワード クラウド経費「明細が重複している場合に表示されるアラートをアップデートしました」
  • AppZen「Agentic AI expense report audit for financial services and banking」
  • Emburse「Four in Ten U.S. Employees Have Used AI to Generate Fake Expense Receipts」

参照した報道

  • ITmedia NEWS「本物そっくり“AI生成レシート“が経費精算の脅威に マネフォ『自力で見破るのは難しい』 企業はどう備える?」

参照したネット反応

  • 兎耳山ルカ 公認会計士氏のX投稿
    • 第三者ミラーで9月11日夜に反応数を確認
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